その場所は、
いつだってあたたかくて
泣きたくなるの。
それでも、
約束で繋がれてる訳じゃないから
もう一度
私から手を伸ばすよ
裏路地で、こっそりとイッキさんに告げたのは、
私の決意。
この前とは明らかに違う私の表情に、一目で察知したらしく、
悪戯っぽい笑みで背中を押してくれた。
大通りに出ると、真上から降り注ぐのは焦れつくような光。
梅雨明け宣言を待ちわびていた私に
ようやく太陽は応えてくれたらしい。
それでも、例年に比べて今年の夏はとんでもなく冷夏になるらしいけれど。
通りに並ぶ向日葵のつぼみを見ながら、鮮やかな黄色を願った。
夏休みに入り、私の計画も佳境を迎えている。
ちょっとでも変わったって思って貰えるように、
髪色を変えたり、
大人っぽいメイクを練習したり、
思いつく事は全て試してみた。
だって。
あと少しで、トーマに逢えるんだ。
瞼に浮かぶのは優しい笑顔。
繋いだ手の温かさだって、
離れていたって思い出せる程。
だけど私は、もっとトーマの近くに行きたいの。
いつだって逢いたい理由なんて
後付けで。
頭で考えるより先に、心が、体が
動いている。
体中がトーマを好きって叫んでる。
もう戻らない。
もう止まれないよ。
だから、あと少しだけ待っててくれる?
紙ひこうきを飛ばすみたいに、遠い空を見上げて放った想いは、
今すぐ彼の携帯を鳴らす事はないけど。
きっと届くはず。
ー今年はどんな、夏になるんだろう。
思い出の坂道を上りながら、眩しさの向こう側に見える未来を想像する。
大切な約束をしたあの日から、ずっと続くこの道の先。
そこに広がる景色の中で、いつまでもトーマと手を繋いで歩くのが、
どうか、私でありますように。
夏の蒼穹に見下ろされながら、
強い想いに動かされるまま、私は次の一歩を踏みしめた。
…fin
update/20120518
<memo>
色々とご都合主義で捏造ふんだんのストーリー、最後まで読んで頂きありがとうございました。
細かな後書きなどは日記にて…。